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まちつくの3年間(前編)

真岡まちづくりプロジェクト(以下、まちつく)が始まったのは2021年のこと。それから3年間、市内外の子どもから大人まで、多くの方とさまざまな企画を実施してきました。グッドデザイン賞や国交省の地域づくり表彰を受賞するなど、まちをつくる取り組みとして市内外に広がってきています。

そんなまちつくを事務局として支えてきたのが、真岡市プロジェクト推進課複合交流拠点整備係、係長の林大輔さん、マリエッティこと黒川麻里絵さんのお二人です。

何もかも初めてづくしだったプロジェクト。特に係員として配属されたばかりだった黒川さんは、開始当初は戸惑いも大きかったそう。当時の気持ちもリアルにお話いただきつつ、お二人に3年間を振り返っていただきました!


林 大輔(はやし だいすけ)
1975年生まれ。兵庫県明石市出身。東北大学教育学部を卒業後、1998年に真岡市役所入庁。真岡まちづくりプロジェクトの発起人。NPO法人TSUKURU MOKA監事。社会教育士。


黒川 麻里絵(くろかわ まりえ)
真岡市(旧二宮町)出身。下館第一高校、明海大学を卒業後、2011年に真岡市役所入庁。税務課、建設課、こども家庭課で勤務したのち、2018年からいちごサミット推進室へ。全国初イベントの開催に向け奔走するも、コロナのため開催延期に。絶望していた2020年、真岡まちづくりプロジェクトの担当となる。


「まちづくり」をやらなければいけないらしい


―はじめに、まちつくが始まったきっかけを教えてください。

林:2025年春にオープン予定の複合交流拠点の担当として着任したことです。ただ建物を作るだけではなく、もっと公共空間の使用を広げていかなければ、という課題意識があり、何か仕掛けなくちゃいけないなあと考えていました。

市長ともお話しする中で、大学と一緒にまちづくりを推進していけるといいのではと思い、以前から講義などをお聞きしていた宇都宮大学の石井大一朗先生に会いに行きました。2021年3月ごろ、石井先生に実際に真岡を見に来てもらい、翌月からまちつく1期生の募集がスタートしました。(詳しくはこちらの記事から)

―3月に企画して、4月から開始!タイトなスケジュールだったと思いますが、そのとき、黒川さんはどんな認識でしたか?

黒川:正直、何をやっているのかよくわからなかったです(笑)

林:だよね(笑)

黒川:私は2020年10月に異動してきたばかりで、複合交流拠点の仕事を覚えるので精一杯の時期でした。そこにいきなり何も決まっていないよくわからないものがきて、一旦置いておこう…という気持ちでしたね。

林:複合交流拠点の方は、100ページくらいある募集要項をつくっているときで、まだ施工や運営を委託する企業も決まっていない時期でしたからね。

黒川:3月にお会いした石井先生も、オレンジの帽子に緑のジャケットで黄色の車に乗って現れて…。林さんは熱量をもって話しているけど、この人はなんの先生なんだろう?と思いましたし(笑)複合交流拠点もある中で、内心は「来月だぞ~?」と思っていました。

それから1カ月で、公共空間の利活用を行う4回のプログラムをやると決めて、募集を開始。新しいことをやるのは嫌いな方ではないのですが、それにしてもわからなすぎて、このあたりの記憶はあまりありません…(笑)。

学生たちの目の輝きが見えた


―はじまりは活動にあまり前向きではなかったのですね(笑)意識が変わるきっかけはありましたか?

黒川:まず驚いたのは、人が集まったことです。大人、学生含め20名の募集に対し、40名近い応募がありました。

林:周囲からは集まらないよと言われていましたからね。

黒川:既存の組織から推薦していただかないといけないのかな、などと考えていたので、まちづくりに関心がある人がこんなにいるということが衝撃でした。

意識が大きく変わったのは、1回目のプログラムをやってみてからだと思います。まちづくりの知識がないのに、まちづくりに関心がある人が集まる中で話をしなければならないし、そもそもコミュ力が高くないから人前で話をするのも苦手だし、当日は緊張で吐きそうでした。でも、始まってみたら参加者のやる気やエネルギーが感じられて、山口さんのプレゼンテーションでみんなのマインドが変わっていくのがわかったんです。

1回目のプログラムの会場は、国登録有形文化財の久保講堂。参加者はステージの段に座って話を聞いていました。山口さんは真岡市の隣の下野市でさまざまなまちづくりの取り組みをしています。東京や遠くの地域の話ではなく、身近な事例として話してくれたので、良い意味でハードルが下がったと思います。山口さんの発する「真岡でできるんだ」「誰かにやってもらうんじゃなくて自分たちでやるんだ」というメッセージが、参加者に入っていくのを感じました。みんなの目がキラキラしているのを見て、この取り組みは大事なことなんだなと思ったのです。

久保講堂で行われた第1回ワークショップ

まちづくりは相変わらずよくわからないけれど、ここに集まった人たちが良い感じだから、この取り組みが「楽しい」と感じられるようになりました。

―気持ちが前向きに!

黒川:はい(笑)。あとは、1年目の終わりに、1期生として参加してくれた大学生の励大くん(詳しくはこちら)と1on1をしたことも大きかったです。1on1は彼が考えた企画で、いろいろな人と話すことで気づきやアイデアを得るためだったと思うのですが、私の回はお悩み相談会になってしまって。「まちづくりがよくわからないんですが、どういう風に知識を深めているんですか」と励大先生に相談しました。すると励大くんは、「でも、黒川さんはまちづくりを楽しんでいますか?」と。「よくわからないけど、楽しいです」と答えると、「それでいいんです」と言われました。それが、私にはすごく刺さったんです。

まちづくりについて調べれば調べるほど、どんどんすごい人が出てきて余計にわからなくなっていたんですよね。よくわからくてもいいんだ、楽しいことを前向きにやればいいんだ。そう思えて、もともと考えすぎてしまうタイプなので、楽しいと感じることを大事にしようと思いました。

想像できなかった景色


―1年目は、五行川河川緑地や二宮コミュニティセンター、市役所青空ステーション、金鈴荘の利活用でさまざまな企画が生まれました。(活動の様子はこちら)初回のプログラムからは、どのように進んでいったのですか?

黒川:5月から7月にかけて、活用したい場所ごとにグループを分け、参加者のやりたことを具体化するワークショップを行い、最後の回ではプレゼンテーションをしました。目の前のワークショップを運営するのが大変で、その先については考えていませんでした。その時点では、これはプレゼンテーションを頑張る企画だと思っていたんですよね。ところが、そこから怒涛の展開が始まりました。考えて終わりではなかったのです。

林;動いているチームとそうでないチームの差はありましたが、考えたことを実現していこうねと促していました。最初は市役所2階にある青空ステーションチーム。学生の利用を促進するために、市に掛け合って開放時間を延長してもらいました。茂木高校の蓮さん(詳しくはこちら)が学校でチラシを配ってくれて、茂木高校生が使ってくれるようになったのが嬉しかったですね。次は五行川だったかな。まずはRIVER+という愛称を考え、パブリックサインを作りました。

黒川:考えたことは本当にやるんだ、と悟りました。五行川チームは、ドッグランを作ると発表していて、最初は実現できるとは思えなかったです。でも、大人メンバーの力をお借りしながら10月下旬にドッグランが完成。そのお披露目もかねて、同じく学生が企画した「ピクニックマルシェ」を開催したところ、約2400人が来場しました。ドッグランができたことにも、この場所にこんなに人が集まったことにもびっくりしました。

さらに衝撃だったのが、そのマルシェを見たまちの方から「私もあそこでマルシェをやりたい」と電話がかかってきたことです。企画したものを見て自分もやりたいと思う人が現れたらいいよね、という話はしていました。でもそれは夢の話だと思っていたのです。真岡のまちに「何かやりたい」という人が本当にいるんだと知ることができました。

RIVER+は市役所の職員駐車場の横にあるのですが、そこで何かができるとも、良い場所だとも思ったことはありませんでした。そこにドッグランができて、マルシェが開催されるようになって、今ではサッカーをする子どもたちや学校帰りの学生たち、犬と散歩する方々が日常的に利用する場所になりました。どれも想像の範疇にはなかったことで、とても印象深かったです。

後編に続きます!☟
まちつくの3年間(後編)|真岡まちづくりプロジェクト (note.jp)
聞き手:粟村千愛(真岡市地域おこし協力隊)