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まちつくインタビュー vol.7 今西蓮さん

できない理由ではなく、できる方法を考える。企画から実行まで、自分たちでつくる面白さ。

真岡市出身で、白鷗大学1年生の今西蓮さん。茂木高校3年生の時、真岡まちづくりプロジェクト(以下、まちつく)に参加し、市役所2階の青空ステーションで人の集まる場づくりをしてきました。高校から一人でプロジェクトに参加した時は、とても緊張したと言います。そんな今西さんが生まれ育ったまちへ抱く想い、活動を通して考えていることとは。お話を伺います。

今西 蓮(いまにし れん)

栃木県真岡市出まれ。白鷗大学経営学部1年。茂木高校3年時に真岡まちづくりプロジェクトに参加。大学に進学した2022年も運営として携わる。

好きなまちだから、もっと良くしたい

―今日はよろしくお願いします。はじめに、今西さんの現在の活動を教えてください。

今西:白鷗大学経営学部の1年生です。まだ入学したばかりですが、ビジネスコミュニケーションコースに所属しています。学校の外では、2021年度のまちつくに参加し、今年は運営として関わっています。

―高校生の時、まちつくに参加されたんですね。応募されたきっかけは?

高校3年生の時、学校で課題研究の授業があったんです。その中で私は、生まれ育った真岡をより良くする方法、というテーマで研究することにしました。すると副担任の先生から、真岡でまちづくりのプロジェクトが始まるからやってみたら?と勧められたんです。活動期間も課題研究の期間とぴったりで、これはやるしかない!と思いました。茂木高校はボランティアが盛んで、私自身もさまざまな活動に参加していたので気軽にやってみよう、という感じでしたね。

―どうして「真岡をより良くする方法」というテーマで研究しようと思ったのですか?

真岡を好きだと感じていたので、もっと良くならないのかなと思ったことがきっかけです。

例えば高校生の時、私は毎日電車通学していました。帰りは16時26分発の電車に乗るのですが、1両編成で混んでいて。満員で揺られながら帰るのが大変だなと感じていました。でも、次の16時50分発は比較的空いているのに、2両編成なんです。だったら26分発を2両にして、次の時間を1両にしたらいいですよね。その考えを鉄道会社のアンケートに記入して提出したこともあります。まちをより良くするために考え行動できればと思っていました。


制限の中で何ができるか

―ありがとうございます。まちつくに参加してみて、いかがでしたか?茂木高校からは、今西さん一人の参加だったんですよね。

そうです。ボランティアに参加することはあっても、自分一人で行くのは初めてだったので最初はすごく緊張しました。応募のメールや連絡なども、お母さんに意見を聴きながら必死でやっていましたね。

初回のワークショップでは、会場に着いて「どこでも座っていいよ」と言われましたが、どこに座ったらいいかわからなくて…。別の学校の高校生の集団の中にちょろっと入って座っても、緊張してしまって誰とも話せませんでした。でも、その日の最後の頃に真岡女子高の子達が話しかけてくれたんです。大人メンバーの方々も話しかけてくれて、話せるようになったら楽しくなりました。3回目からチームに分かれて話し合うようになり、同じチームのメンバーと仲良くなれましたね。

私は青空ステーションチームで、市役所2階の市民プラザ、青空ステーションの活用を考えることになりました。最初に浮かんだのは、図書館みたいな学習スペースにすることです。でも、学習スペースだけだと使う世代が定まってしまうかなって。学生がカリカリ勉強しているスペースを子どもとお母さんが使うのは気まずいだろうし、勉強している人同士も話にくくなってしまうと思いました。キッチンカーを呼んで飲食できるようにしたり、映画鑑賞や子供の水遊びスペースを作ったり、室内だけでなく外にも何か作れないかと考えました。

まず一般の方にも使ってもらえるスペースとして、7月下旬に青空ステーションをオープンしました。夏休みの直前だったので、高校のみんなに青空ステーションのことを知って欲しくて、チラシをもらって学校に貼ったり配ったりしてもらいました。SNSでも「青空ステーションを使ってください」とお知らせしました。

すると、同じ学校の子達が「青空ステーション行く」と話していて。すごく嬉しかったです。「私が作ったんだよ!」と言いたいくらい(笑)。友達も「蓮ちゃんが作ったの?すごいじゃん」と言ってくれました。真岡に住んでいない子も青空ステーションに来て勉強する姿を見られるようになったんです。これまで知られていなかった場所が、みんな知っている場所になりました。

その後、外のスペースにテーブルやベンチを設置したいと話し合って、木製パレットを使ってベンチを作りました。大人メンバーが素材を準備してくれて、私も釘を打つなどしてみんなで製作。メンバーから芝生を使いたいというアイデアが出て、人工芝を貼って仕上げました。

勉強したり、ご飯を食べたり…様々な人が集まる場所になった青空ステーション
手作りしたパレットを使ったベンチ

使う人が増えると、いろいろな意見もいただきました。例えば、室内に設置されていた、動画と音声で情報をお知らせするモニターの音量が大きすぎる、と。私はそのモニターを管理している市役所の人ではないので、自分に何ができるんだろう?と困ってしまいました。でも市役所の方に相談したところ、担当の方とお話しでき、音量を絞ってもらうことができました。

一方で、冷房の温度が低すぎるなど、対応が難しい意見もありました。その温度が快適に感じる人もいるので、どの人の基準に合わせるべきか、どう判断すべきか悩みました。

また、飛ばされてしまうものを設置してはいけない、壁に展示物を貼ってはいけないなど規制も多く、やりたいと思っていてもできないこともありました。

そんな経験をしていくうちに、できないのにも理由があるんだなと気がつきました。以前私が鉄道会社にアンケートを提出した時、結局車両数は卒業まで変わらなかったんです。なぜ変わらないんだろうと思ったこともありました。でも、そこにも何か理由があったのかもしれません。やりたくてもできないことがある。でもそれを受け入れた上で、できることもあるはずです。制限の中で何ができるか、どうやったらできるか考える大切さを学びました。


「自分でやった」実感を持ってまちづくりを

―実際に企画から実行まで取り組む中で、気づきがあったんですね。最後に、今後の展望を教えてください。

今後も真岡に携わっていきたいと思っています。まちつくのメンバーと話していて、まちつくの活動は自分が生まれ育った真岡だからできたし、真岡だから楽しかったのだと思うようになりました。研究課題は終わりましたが、これからも真岡をより良くするための活動をしてみたいです。

例えば交通分野ですね。課題の中でもなぜ真岡に人が来ないかを考えたのですが、交通網が弱いと思うんです。電車もバスも運賃が高いですし、駅についてもそこから目的地に行く手段が少ないと感じます。私のおじいちゃんは映画の会の会員で定期的に市民会館に映画を見にいきますが、帰りの時間にすでに市のコミュニティバスがないんです。井頭温泉行きのバスも本数が減ってしまって、行けなくなってしまったと。車がないと出かけるのが難しいと感じます。交通手段が増えれば、真岡に来る人も増えるはず。ないなら作るしかないのかなと思っています。

以前から、真岡は住みやすいまちだと感じていました。でも、まちつくに参加したことをきっかけに、もっと良くするためにはどうすればいいか考えるようになったんです。父や母とそんな話をしていると、2人がいい案を言ってくるんですよね。「長く住んでいると違うな」とちょっと負けた気持ちになります(笑)

まずはここに住んでいる人たちが、もっと住みやすいまちになったらいいなと考えています。みんなが住みやすかったら、それが広まって真岡に来てくれる人も増えるかもしれない。住民に寄り添えるまちになったらいいなと思います。

まちつくでは、今年は運営として活動します。新しく募集した高校生・大学生メンバーは、考えが若くてキラキラして感じますね。アイデアの実現のために手伝っていきたいです。

まずはアイデアを出すことが大事ですね。私はこれまでいろいろなボランティアに参加してきましたが、どれもあらかじめ考えられた企画で、私たち学生には役割がありました。例えば「この遊具を作ってみんなで遊ぼう」という感じ。大人が考えてくれたマニュアルがあり、私たちはそれに応じてやっていればうまくいきました。でも、まちつくは自分でアイデアを出して、それをどう実現していくかまで自分たちで考えます。

何かものを作るなら、どれくらいの期間で、いつ集まって、どうやって作るのか?まで考える。そこから考えるのはやったことがなくて、これまでの活動で初めて、自分でやっている実感を得られました。自分一人では経験も知識もないし何もできなくて、チームの人たちに助けられまくりでした。でも、いつも自分がやっている感覚があって楽しいし、記憶に残る活動だったんです。

だから、プロジェクトをただの作業にするのではなく、自分でアイデアを出してそれを実現することを楽しんでほしいです。思ったようにできないことも多いと思うけれど、アイデアの中心は崩さず、実現できる方向にちょっとずつ変えながらやっていったら楽しくなるはず。楽しみながら、頭を使っていろいろな人を頼って、一緒に街を作っていきたいです。


取材、文章、写真 : 粟村千愛(真岡市地域おこし協力隊)

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