まちつくインタビューvol.11 白金励大さん
あしたまた、来たくなる若者の居場所づくり。自分で街をつくるワクワクを広げる。
空き家活用プロジェクトや大学生キャリア支援プログラムなど、大学に通う傍らさまざまな活動に取り組む白金励大さん。軸にしているのは「若者の居場所づくり」だと言います。白金さんが目指す地域のあり方、これから取り組みたいこととは?(2022/7掲載)
白金 励大(しろがね れお) 岩手県釜石市生まれ、栃木県那須塩原市黒磯育ち。宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科4年。NPO法人とちぎユースサポーターズネットワークインターン生。宇都宮空き家会議『空き家の学校』学年主任。大学生向けキャリア形成支援プログラム「Cross Mentorship」チューター。
空き家を活用し、若者の居場所づくりを
ー白金さんの今のご活動を教えてください。
白金:宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科の4年生です。学内外合わせて10以上のコミュニティに所属し、さまざまな活動をしています。真岡まちづくりプロジェクト(以下、まちつく)もその一つです。
特にいま力を入れているプロジェクトは2つ。一つは、空き家活用プロジェクトです。自治体やNPOと連携して宇都宮市にある空き家をDIYし、イベントを開催したり人が集まる場づくりをしたりしています。
私が担当しているのは2件の空き家。宮の原地区にある空き家では、「あきやのだがしや」という1日限定の駄菓子屋さんを開きました。近所の子どもたちやおじいちゃんおばあちゃんが来て、喜んでくれたのが印象的でした。そのほかにも、夏休み期間に小学生が大学生と一緒に勉強したり、実験や観察を通して学んだりできる場づくりをしています。東峰地区にある空き家では、「地域の余白に色をつける」ことを目標に大学生メンバーを集めて月一でイベントを企画・開催しています。
もう一つは大学生向けのキャリア形成支援プログラム「Cross Mentorship」、通称クロメンのチューターです。クロメンは株式会社CroMenが運営している、自己内省ワークや社会人によるメンタリングを通して、自分の好きなこと、やりたいことを言語化・具体化していくプログラム。全国から650名以上の大学生が参加しています。
私は2021年に先輩からクロメンを紹介してもらい参加しました。やってみて、自分のやりたいことを説得力のある言葉で伝えられるようになったと感じたんです。他の大学生のサポートができたらいいなと思うようになり、今は、関東エリアでプログラムの運営をサポートしています。
あとは、学内で学生向けのメディアを運営したり、NPO法人とちぎユースサポーターズネットワークでインターンをしたり、学生生協の委員会や学生組織で活動したり、村留学に行ったりバイトしたり…と、興味のあることにどんどん挑戦しています。
ー本当に多様な活動をされていますね!どんな活動をするかの方向性は決めていますか?
やりたいことは「若者の居場所づくり」です。特に学生が、いろいろなことを知ってやりたいことを実現できる場を作りたいと考えています。
そう思ったのは、大学2年生のとき、福島県白河市のコミュニティカフェでインターンしたことがきっかけです。そこは高校と駅の間の高校生が通いやすい場所にあり、大学生が運営して地域課題の解決にも取り組んでいました。地域の高校生が大学生や大人と関われる場所があるのがとてもいいなと思いました。
自分が高校生のときにもこんな場所があればよかった。地域にこんな場所があれば、喜ぶ学生が増えるんじゃないか、と思い、自分でやってみようと考えたんです。空き家が問題になっていたこともあり、そこから宇都宮で空き家を活用した居場所づくりを始めました。
やりたいことを探して、たどり着いたまちづくり
ーそもそも、地域やまちづくりに興味を持ったきっかけは?
興味を持ったのは高校生のときです。私は小さい頃からサッカーが大好きで、プロを目指して本気で取り組んでいました。高校でもサッカー部に入りましたが、スタメンを取られてしまって。上を目指していたけれど、自分では無理だと痛感しました。それでも3年間、部活に本気で取り組んで引退。引退すると、何をしたいかわからなくなりました。サッカー以外何も残っていなかったです。
やりたいことを探していた頃、総合学習の課題で、グループになって防災マップを作りました。市役所や警察署、神社などに話を聞きに行ってまとめて作ったマップが、高校代表に選ばれたんです。学外に発表しにいくと、別の高校の女子高生にナンパされて…。決してそれが理由ではないですけど(笑)、マップを作った体験から地域に目が向くようになりました。
そんなある日、雑談している中で「黒磯駅の近くでは自転車に鍵をかけないと必ず盗まれるよね」という話になったんです。そういう小さい問題が積み重なると、地域自体にマイナスなイメージが生まれてしまうなと思いました。そこから、どうやったらまちを変えられるんだろう、どうやったらより良くなるんだろう?と考えるようになり、まちづくりに興味を持ったんです。
大学で学びたいと思い、関連する学部を見学に行きました。特に、都市政策としてまちをつくったり、企画を学んだりするのが面白そうでワクワクしましたね。自分の考えたことがまちで生かされ、実現されていくってすごいなと。自分にもできると思いましたし、これをやろうと決めました。
ーそこから宇都宮大学に進学されて、いろいろな活動をされるようになったんですね。
実は東京の大学が第一志望だったのですが、落ちてしまって。悔しい気持ちもあって1年生の前期は、「宇大を制覇するぞ」と意気込んでいました。入学式前に同じ学科の友達とはほとんど話していましたし、入学してすぐ花見を企画。動いていたので自然とコミュニティが広がっていきました。
でも、前期が終わって振り返ると遊ぶことしかしていなくて。そもそもまちづくりがしたかったはずなのに、遊んでいていいのか?と立ち止まりました。何かしたいけれどやり方がわからない。誰かに聞こうと考え、学年の担任をしてくれていた先生の一人である石井大一朗先生に相談したんです。すると先生が、さくら市の廃校を活用したアートプロジェクトに参加しないかと誘ってくれました。
「やりたいです!」と答えて、まとめ役になってプロジェクトを進めていきました。社会人と学生とが一緒に作るプロジェクトだったので、そこでさまざまな地域の人と関わることができ、地域に入り込むようになりました。
多様な人と一緒につくる
ーまちつくの活動に参加されたのは?
そのまま石井先生のゼミに入り、そこで紹介を受けました。真岡市はサッカーが強い地域という認識はありましたが、あまり詳しくなくて。自分があまり知らない地域だからこそ、地域の外の人の目線で変化を見られたら面白いんじゃないかと考え、参加することにしました。
ー活動されてみていかがでしたか?
最初にまち歩きをしたのが楽しかったです。どの場所で何を実現するのか考えるのですが、実際にまちを見ないとわからないなと実感しましたね。そこからまち歩きが好きになりました。
プロジェクト全体では、「ここがこうなればいいのに」と考えたことが、実際に形になるのがすごく面白かった。私は五行川の河川緑地を活用するチームで、ドッグランを作っていました。犬を飼ったことがないので最初はわからなかったのですが、実際に作ってたくさんの犬が遊んでいるのをみて、すごく必要な取り組みだったんだなと実感しましたね。
河川緑地ではマルシェやナイトシアターも開催しましたが、どれも人が集まって、すごく楽しい雰囲気で。自分の手でまちをつくれるんだと肌で感じました。
ーいろいろなプロジェクトに参加されてきて、まちづくりをする上で何が大切だと感じていますか?
特にまちつくで感じたのは、何かしたいと思う大人がいる地域は可能性が大きいということです。学生が何かするときはどうしても大人の協力が必要なので、そこで協力してもらえると活動が形になり、継続できます。まちつくでは民間だけではなく、市役所と一緒に官民連携して動けているのも魅力だと感じましたね。だから他の行政からも注目されるんだと思います。
あとは、人を巻き込むことですね。自分がプロジェクトをやるときは、地域内外のなるべくいろいろな人を巻き込んでやるのが面白いし、継続できると思っています。地域の中だけで終わってしまうと、尖った意見が出にくいし、外の方に知ってもらいにくい。全国的に知ってもらって人を宇都宮に引っ張って来れるようになるといいなと感じています。
巻き込み方も大事です。最初は人を巻き込んでも、メンバーがだんだんやりがいを持てなくなってしまうこともありました。単に声をかけるだけで、なんでそのプロジェクトをやるのか、その人にどんなメリットがあるのかを説明できていなかったんです。いまは、目的やその人に入って欲しい理由、その人へのメリットをきちんと伝えて巻き込むようにしています。
若者が活躍し、外に開いた地域づくりを
ーありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。
今後は、若者の居場所づくりと選択肢の多様化を目指し、空き家活用の事業を軸に起業したいと思っています。活動の中で出会った同年代の3人で企画していて、とちぎユースサポーターズが主催するスタートアッププログラム、「「iDEA→NEXT(アイデアネクスト)」に参加しています。
北関東を中心に、高校生、大学生の人材育成をしていきたいですね。いろいろな分野で活躍する大人や面白い場所を紹介して、やりたいことを見つけるサポートをしたいです。若者と地域企業とつなげて、企業の抱える課題解決などもできればと考えています。
名称は、「一般社団法人あしたまた」にする予定。明日またやりたいと思えることや、明日また会いたいと思える仲間が集まる場をつくり、若者が活躍できる環境を作っていきたいです。
いずれは全国で知られるようなよい事例を作り、注目度を上げたいです。都心から栃木、群馬、茨城へ人が流れる動きを作れたらいいなと思っています。自分の手でまちは変えられる。自分自身、今もそう思っているし、そう思える人を増やしていきたいです。
取材、文章、写真 : 粟村千愛(真岡市地域おこし協力隊)