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宇宙?科学?アート?考えることを楽しむ空間。カフェから始まるまちづくり。

栃木県真岡市で、まちづくりに取り組む方々の想いを伺うインタビュー!今回は、門前地区に佇むカフェ、「 qafeanon(カフェアノン)」店主、みっきーさんにお話を伺います。

みっきー/qafeanon店主
北海道出身。高校卒業して間も無く上京し、縁あって栃木県鹿沼市に移住。複数のカフェで働く中で、個人でも「ミッキーコーヒースタンド」を始動、真岡市門前地区で定期開催していた門前びわ市に出店。それを機会に宇都宮市の複合型商業施設にて自分の店を3年経営したのち、2021年に真岡市門前地区にqafeanonをオープン。
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好きなものを詰め込んだカフェ


―みっきーさんのご活動を教えてください。

qafeanonの店主をしています。 カフェですし珈琲もすごく好きですが、一番大事にしているのは空間づくりです。私の好きなものを詰め込んだ空間ですね。


私は思考するのが好きで、小さい頃から「なんで自分は自分なんだろう?」「私が見ている目の前の視界ってなんなんだろう?」と哲学や量子力学的なことを考えている子どもでした。今もそういう話をするのが好きで、宇宙や古代文字、人類のルーツや日本神話などの癖のある本ばかりお店に置いています。「この本は誰のチョイスなんですか?」とよく聞かれますね。最近はお譲りいただく本も増えましたが、どのみち全て私の趣味趣向です。

誰でも入れるように一見普通のカフェに見えるような店づくりを意識しているのですが、わかる人が見れば、本棚やちょっとした置物や雑貨などで察することができるようにしています(笑)。

作家活動をしている知人が多いので、不定期にギャラリーやワークショップなどを開いています。 真岡中学校美術部のみなさんの作品を展示したこともありますよ。地域の若者にも使ってほしいと思っています。

北海道から栃木へ、カフェ修行

ーどうして真岡でカフェを始められたのですか。

話すと長くなるのですが…もともと、出身は北海道です。当時はライブハウスに入り浸っている若者でした。でも、若気の至りで地元の何もかもつまらなくなって、北海道から出たいと思い上京。いろいろなアルバイトを掛け持ちし、遊びに全力を注いでいました。

その頃、好きにお店をやらせてもらえる機会がありました。当時の私はとても未熟で、人との付き合い方も、経営の仕方もわからないのに偉そうな人は嫌いで、同業の先輩から店づくりのアドバイスをもらっても「価値観押し付けんな」と受け入れることができませんでした。自分が良いと思ったもの以外は全てダサいと思うくらい、尖っていたんですよね(笑)。トゲトゲのウニみたいでした。そのくせ言われたことにはしっかりダメージは食らっていて、すぐに嫌になって辞めてしまいました。完璧なまでにダメな若者でしたね。でも、qafeanonの原型はここにあるなあと今では思います。

それからはいろいろバイトをしていく中で心の成長をしつつ(笑)、ある時からバイトするにしても珈琲を扱うことからは離れない業種に絞ってやってみようと決めて働くようになりました。当時の恋人が栃木県の出身だったので、栃木​へ​遊びに行くことが増え、好きなお店もできました。

ある日、彼の親戚が所有する空き家に住んでくれる人を探していて、破格の家賃で借りられると聞き、「そんなに安いなら栃木に住んでみようかな」と移住することにしたんです。

ーそれで栃木に!フットワークが軽いですね。

住む場所を変えることにあまり抵抗がないんですよね。鹿沼市のカフェレストランで働けることも決まり、栃木で暮らし始めました。もう少し深く珈琲の勉強がしたいなと思い、宇都宮のコーヒースタンドを掛け持ちして、しばらくダブルワークをしていました。

コーヒースタンドでは出張珈琲など一人で任される仕事も多く。大変でしたが、自分のやりたいようにできるので勉強になりました。そんな中で、よく自分が通っていた古着屋ぞんびのオーナーから、「お店でコーヒーを入れてみない?」と提案していただいたのです。それが個人での活動の一歩目でした。

すると、その時の写真を見たお好み焼きARIGATOのオーナーのはじめさんから、「真岡で門前びわ市をやっているから、うちの駐車場で出店しない?」とお話をいただいて。そこから真岡とのご縁が始まりました。

ー門前地区で開かれていた「門前びわ市」に出店されたのですね。真岡の印象はいかがでしたか。

「なんだ、この街は!」と思いました(笑)。出店者の方のレベルが高くて衝撃を受けたんです。当時はマルシェというと派手な色のお店が多いイメージだったのですが、びわ市全体が柔らかい色合いで統一されていて、とてもおしゃれ。洗練された大人の空間という感じで、日本っぽくなくて新鮮でした。

そして何より、人があたたかかったですね。その日私は、自分が乗っている原付バイク、スーパーカブの上に板を置いて、その上で珈琲を淹れていたんです。そのスタイルがよほど面白いと思ってもらえたのか、本当にいろいろな方に声をかけていただきました。自分で行動したことでこんなに反響があったのは初めてでしたし、1日で本当にいろいろな方とつながることができました。当時を知っている人からは、あのスタイルは今でも衝撃だったと言われます(笑)。

そういったご縁のおかげで、宇都宮でテナント商業施設を運営している方に「珈琲屋さんを​探しているんだけど、お店やらない?」と声をかけていただき、個人名義で活動するようになっておよそ4ヶ月後には店舗をオープンすることになりました。最初は自分でお店を経営するなんて無理だと断ったのですが、そういう人にこそやってほしいと言っていただき。当時所属していたコーヒースタンドのオーナーに相談したり自分でも考えたりした末、やってみようと決めました。

だから、真岡でのご縁から、いろいろなものが動いていったんですよ。住んだこともないしびわ市の雰囲気しか知らなかったけれど、「絶対ここに帰ってこないと」と思いました。


真岡で人間にしてもらった

 
ーそこから実際に真岡で店舗を持たれるように…。

そうなんです。宇都宮での3年間は楽しいながらもやはり何かと大変でしたが、一度東京で経営を投げ出した経験があったから修行だと思ってやり切れました。ちょうど契約期間の3年が終わる頃、真岡の空き物件の連絡があったので、すぐにその物件に決めました。不思議ですが、自分が探さなくても物件の方から話がくるという予感があったのです。思っていた通りタイミングよく話が来たので、即決でした。

紹介してもらったのは、真岡駅前に移転したNrucさんが入っていた、門前地区にある物件でした。特に急ぐわけでもなかったので、自分の好きな空間になるように友達とのんびりリノベーションしていましたが、周囲の方が何かと手助けしてくれて、保健所や市役所の方も良い方ばかりで。そういった人とのご縁とお力で思ったよりずっと早くお店が出来上がっていきました。

お店の外でも良い出会いが。家から一番近い美容室のヘアラボナチュラさんに初めて行った時、店長の日置さんが担当してくれました。門前で店を開く話をしたら、「 今度ナチュラの周年イベントがあるんだけど来れない?」と誘っていただいて。ありがたく出店させて頂いたら、お隣で一緒に出店したリンネ農園の中村さんと仲良くなり、「真岡市役所西側路地で水曜マーケットってのを始めたんだけど、来ない?」と声をかけていただきました。出店していると役所の職員さん達とも顔馴染みになっていき、オープン前にお店の認知度をあげることができました。この頃、お店の扉に陰謀論だの宇宙だの自分の好きなことを書いた貼り紙をしていたので、「やばいお店ができるんじゃないか」と地域の人たちにはざわつかれていたみたいなんです(笑)。間違いではないですが、オープン前に皆様の不安が解けてよかったです。

何の問題もなくオープンを迎えることができ、良い人たちと繋がれているなと日々感じます。以前はとにかく個性が好きで、ダサいのは嫌だみたいなところがありましたが、下手に殺気だって主張しなくたって、みんなに個性や特性はあるのだから、人のあたたかさが全てだなと今は思います。トゲトゲのウニみたいだったところから、真岡で人間にしてもらいましたね。


理想郷を出て、地域への恩返しを

ー今後の展望を教えてください。

真岡で開店してからこの2年間は、自分と似たような趣向の人が来てくれるようなお店づくりをしていました。変な人に来てほしいと思っていたんです(笑)。その結果、只者じゃない、いわゆるアウトサイダーな人ばかりが訪れてくれる店になって、2023年の時点で自分にとっての理想郷が完成したと断言できます。

でも、達成してみるとつまらなく感じてしまって。自分のやりたいこと、ありたい形はこれで終わりか?こんだけ?世界がそんなに狭いわけがない、と。もっと外側に意識を向けて、今まで興味のなかったことや人、今までだったら苦手なタイプの人、いろいろな価値観にちゃんと関わってみたいと思うようになりました。

これからは、ずっとやりたいと思いながらも経営を優先していたので踏み込めていなかった、地域に貢献できるようなことをしてみたいと思っています。

特に、まちに若者の意見が反映されて、やりたいことが実現できるといいと考えています。そのお手伝いがしたいです。真岡中学校の美術部の先生と知り合い、真岡中美術部さんの個展をしたときはとてもよかったです。言わなければ中学生が描いたと思えないような素晴らしい抽象画の数々を展示してくれました。今後も、子どもたちが好きに表現の場として使ってくれたらいいなと思います。

今後は、よりクリエイティブな時代に入っていくと思うので、自分の琴線に触れるようなクリエイターは特に応援していきたいですね。真岡は、ポテンシャルは高いけどすやすやと眠ってるような静かな街なので、いろいろな可能性を感じます。

真岡の方とお話ししていると、なんで真岡に来たの?と聞かれることがあります。「真岡めちゃめちゃ良いですよ」と言っても、「ええ?」という感じで、あまりわかっていただけないですけど(笑)。そこがまたいいですし、地元っていうのはそういうものですよね。

小学生のころ読んだ本の中に、「虹の足の部分にすっぽり包まれた街」という描写がありました。山の上からその光景を見た人はすごく貴重なものを見ている感覚だけど、その街の中にいる人は気づかないし、普通に暮らしている。私にとって真岡はそんなまちですね。県外から訪れるお客さんも、「時間がゆっくり流れていて、いい町だね」とみなさん仰ります。

これからは、そんな真岡の中で人手の足りないところへ顔を出したり、何かやっているなら遊びに行ったりと、もっと真岡の人の中に入り込んで、自分の世界を広げてもらった恩返しをしていければと思っています。